本物というものは、いつもどこか嘘くさい。 いま私の目の前に広がる、ユグドラシルの樹もまるで作り物のようで。 それでも、風に揺れる葉が、自分は本物であることを告げている。 「ツナ君」 「ん、」 「ユグドラシルって大きいんだね」 「うん」 「きれい」 雄大に広がる宇宙樹を見上げながら。 こちらを見ているツナ君は、今にも泣きそうな顔で笑っていた。 「ここがバルハラだよ」 【戦死者の広間】という意味をもつ館。 そこは世界神を統べるツナ君が住んでいる場所。 常に光のあたる、暖かい場所。 「たくさん部屋があるんだね」 「確か540くらい扉があるって言ってた」 「ご、ひゃく・・・それ全部使ってるの?」 「うーん。俺もどこに何の部屋があるか知らないんだ」 からからと笑うツナ君は、まるで少年のようで。 この人がこの世界を治めているなんて、とても思えない。 一番奥の部屋、ツナ君の自室につくと大きなソファに座らされる。 向かい合った瞬間、2人の間の空気が張り詰めた。 このあと、彼の口から出るであろう言葉が読み取れる。 「さて、任務の話をしようか」 「うん」 「さんは、【ラグナロク】を知っている?」 (2008/12/13 キミは知らない) |