ぼんやりとした空気がとりまく車内は、段々と輪郭を取り戻す。 汽車のスピードが落ちてきた。 目的地は、もうすぐそこ。 完全に止まるまで、私は翼君にたくさん「常識」を教えてもらった。 シゲちゃんも何度か口を挟んだが、あの冷えた目は見せなかった。 もしかしたら、私が「気付いた」ことに気付いたのかもしれない。 まあ、いっか。 車内アナウンスに促され、手荷物のみを持って外へ出る。 何人かのかたまりが、眼前を支配した。 もちろん、全員男子。 女の子は埋もれているのかも、なんてひとり苦笑をもらす。 シゲちゃんと翼君が、さも当然のようにかたまりに手をあげる。 向こうからも「久し振り」「どこ座ってたんだよ」なんて声が返ってきた。 私はひとり、かたまりから離れてあたりを見渡した。 見たことのない花が咲いている。 初めまして、非日常。 (2008/07/18) |