赤い絨毯を踏みしめる。 ぎゅ、っと柔らかい音がした。 今度はもう少し強く踏みしめる。 ぎゅ、ぎゅっと、音が鳴る。 シゲちゃんが、肩を震わせていた。 何が可笑しいんだか。 「まるでちっちゃい子供やな」 「何が」 「別に」 「あっそ」 「そういえば、姫さんどこ行ったんやろ」 「見失ったね」 「まあ、後で会えるからええか」 「うん」 扉をふたつくぐり、やたらと奥行きのある広間に出る。 前を歩いていた団体はすでに整列しており、 私たちもそれに倣うように列の後ろに並んだ。 ショートヘアの綺麗な女性が前に出てきて、 これから『組み分け』をする、と教えてくれた。 さっき、翼君に教えてもらった言葉だ。 知ってるか、とこちらに視線を送るシゲちゃんに バカにすんな、という視線で答えた。 「それでは、名前を呼ばれたら前に出てください」 どうやら、男子から先に組み分けするらしい。 下手したら私、一番最後かも。 着々と呼ばれていく名前。 組み分け帽子は、どんどん寮の名前を挙げていく。 ついさっき、翼君が呼ばれた。 彼は、レイブンクローという寮らしい。 寮は2つしかない。 確率は五分。 どうせなら、同じ寮が良いな、とぼんやり思った。 「次、藤村成樹」 透きとおる声で、シゲちゃんの名前が呼ばれる。 いってらっしゃい、とやる気ない声でつぶやくと シゲちゃんはうれしそうに笑いながら私の耳元で囁いた。 「知ってる? 生徒の中で、マグルなのちゃんだけやで」 思わずあっけにとられて呆ける私に、 シゲちゃんはこれでもかと言わんばかりの笑顔を向けてきた。 やられた! このやろう! (2008/07/20) |