シゲちゃんがにこやかな笑顔で迎えてくれたが、

私はそれを無視して椎名君に「よろしくね」と一声かけた。


(さっきの仕返しだ、ばーか!)





























全員が着席した後、檀上に男の先生が上がった。

彼は名前を榊というらしく、この学校の校長だそうだ。



「皆さん、入学おめでとう。

 これから1年間、ここにいる生徒と教師陣で
 
 有意義な時間を過ごしていこうじゃないか」






榊先生の声は、ぬるま湯のように温かく柔らかかった。

きっと素敵な先生なのだろう。

その榊先生いわく、これから一度各寮に行き

1時間後に大広間でウェルカムパーティーを行うのだとか。





























「結局3人とも一緒の寮やったなー」

「お前がレイブンクローなのが納得いかないんだけど」

「何で。シゲちゃんこう見えてめっちゃ頭ええから」

「自分で言う人ほどアテになんないよ」

ちゃん冷たっ!」



汽車の中での延長のように、3人で雑談をしていれば

1枚の大きな絵が掛けられた場所へとたどり着いた。

先頭を歩いていた西園寺先生が言うには、

ここがレイブンクロー寮への入口らしい。














「寮に入る時には、門番に合言葉を言ってね。リジー、」

【はーい。リジーはここにいるデス。】

「レイブンクロー生よ。合言葉を教えてあげてくれる?」

【ウィ。合言葉は”紅い海”ヨ。】




「彼女が門番のエリザベス。皆、仲良くしてあげてね」

【リジーって呼んでチョーダイ。】





























リジーに軽く会釈をして、中に入ればそこは

まさに英国寄宿舎を思わせる内装だった。

6人だけで使うのかと思うと、口も勝手に開いてしまう。






「右が男子部屋、左が女子部屋。双方の行き来は禁止よ」

「なーんや、つまらんの」

「シゲちゃん黙って」

「それと、監督生を決めないといけないのだけど・・・」









「椎名君、監督生って?」

「寮の代表。要は、クラス委員長ってとこだよ」

「へえ。そんなのいるんだ」

「ホグワーツは生徒の自主性を尊重してるからね」































誰にしようか、と右から左へ西園寺先生の視線が流れる。

思わず視線が合う。

しばし見つめあっていれば、先生が柔らかい笑みを浮かべて








「じゃあ、さんにお願いしようかしら」

























なんて言うもんだから、

私はそれこそあいた口がふさがらなかった。




























(2009/07/02)