手に入らないとわかっていたの。 それでも、どうしても視線をつかみたくて。 一度だけでも、なんて悲しいことを願いながら。 貴方の視線と交じりあわないことなど、とっくに知っていたのに。 「ねえ、真田」 「なんだよ」 「海外行くんでしょ?」 「ああ、」 「どれくらい?」 「さあ。最低でも2年はかかるって」 「寂しいね」 「別に」 「またまたー」 「会いに行けばいい話だろ。それくらいの労力は惜しまねえよ」 ふわりと、花が咲いたように笑う顔が目に焼きつく。 いたい。 いたいよ、心臓。 どうしてこの人はこんなに強くて綺麗なんだ。 決してこちらを向かないから、えも言われぬ魅力を感じるのだろうか。 私のことを見ない瞳に、改めて、強烈に恋をする。 (2009.02.20 海外に行くのは、真田の彼女) |